其の一 バイクとの出会い [俺とバイク]
1992年11月。
少年とバイクの出会いは、突然やってきた。
大学に通う少年の移動手段はもっぱら自転車で、車やバイクには全く関心がなかった。車を持っていないことで不便を感じたことは一度もなかった。
秋の心地良い日差しが降り注いたある日、大学のキャンパスに友人がバイクで乗り付けてきた。バイク好きの友人Kは、カワサキの「エリミネーター400」に乗っていた。
”後ろに乗ってみる?”
そう誘われた少年は、生まれて初めてタンデムシートに座った。少年を乗せたバイクを友人Kがスルスルと走らせる。少年がタンデムシートで感じた”バイクの移動する感覚”は、これまでの人生で味わったことのないものだった。
(初めてバイクに乗った場所)
「これは面白い!」
一瞬にしてバイクのとりこになった少年は、翌日教習所に行って二輪講習を申し込み、1ヶ月足らずで卒業検定を合格した。
卒検を終えて、少年はもう免許を取った気分になっていた。あとは免許センターで筆記試験を受けて合格すれば、免許をもらうことが出来る。
筆記試験を受けに行く前日、友人宅ですき焼きパーティーに参加していた少年は、夜のアルバイトに遅れそうになった。
その時、一緒にいた友人の一人が、「俺のバイクに乗って行けよ」と言った。
彼はホンダの「ゴリラ」に乗っていた。
(写真:現行型)
友人からヘルメットを借りて「ゴリラ」にまたがる。教習所のCB400以外、スクーターすら乗ったことのなかった少年は、初めて乗るバイクに緊張した。友人はバイト先までバイクで行っていいよと強く勧める。どうやら自分をバイク仲間に引き込みたいという魂胆があるようだ。卒検をノーミス終えたばかりの少年は、運転に自信があった。
エンジンを始動し、そのまま公道へ。生まれて初めて、エンジンの付いた乗り物を公道で走らせる。
「ゴリラ」は50ccの排気量ながら、シフトチェンジを上手に使うとスピードがのって、小気味よく走る。エンジンの鼓動と体に受ける風も心地よい。国道をエンジン全開で走る少年は、いっぱしのライダーの気分になっていた。
10分ほど走りバイト先に近づいた時、交差点を曲がるため右折レーンに入って停止した。その時、
”とんとん”
と誰かに肩を叩かれた。
何だ!? と思ってうしろを振り返ると、そこに制服を着た男性が立っており、バイクを道の端に停めろという。状況が理解できない少年は、言われるがままにバイクを停めた。
(少年が止められた交差点)
制服を着た男性は言った。
「君、この道を50km/hくらいで走ってきたよね? 原付の最高速度が30km/hなのは知っているかな?」
しばらくたってから、少年は言葉の意味を理解した。自分はスピード違反で捕まったのだと。制服を着た男性は、警察官だった。
警察官に免許証の提示を求められたが、当然免許は持っていない。事情を説明した後、交番まで行くことになった。
少年のバイクライフは、「無免許運転」から始まった。
つづく → 其の二 JADE(ジェイド)
少年とバイクの出会いは、突然やってきた。
大学に通う少年の移動手段はもっぱら自転車で、車やバイクには全く関心がなかった。車を持っていないことで不便を感じたことは一度もなかった。
秋の心地良い日差しが降り注いたある日、大学のキャンパスに友人がバイクで乗り付けてきた。バイク好きの友人Kは、カワサキの「エリミネーター400」に乗っていた。
”後ろに乗ってみる?”
そう誘われた少年は、生まれて初めてタンデムシートに座った。少年を乗せたバイクを友人Kがスルスルと走らせる。少年がタンデムシートで感じた”バイクの移動する感覚”は、これまでの人生で味わったことのないものだった。
(初めてバイクに乗った場所)
「これは面白い!」
一瞬にしてバイクのとりこになった少年は、翌日教習所に行って二輪講習を申し込み、1ヶ月足らずで卒業検定を合格した。
卒検を終えて、少年はもう免許を取った気分になっていた。あとは免許センターで筆記試験を受けて合格すれば、免許をもらうことが出来る。
筆記試験を受けに行く前日、友人宅ですき焼きパーティーに参加していた少年は、夜のアルバイトに遅れそうになった。
その時、一緒にいた友人の一人が、「俺のバイクに乗って行けよ」と言った。
彼はホンダの「ゴリラ」に乗っていた。
(写真:現行型)
友人からヘルメットを借りて「ゴリラ」にまたがる。教習所のCB400以外、スクーターすら乗ったことのなかった少年は、初めて乗るバイクに緊張した。友人はバイト先までバイクで行っていいよと強く勧める。どうやら自分をバイク仲間に引き込みたいという魂胆があるようだ。卒検をノーミス終えたばかりの少年は、運転に自信があった。
エンジンを始動し、そのまま公道へ。生まれて初めて、エンジンの付いた乗り物を公道で走らせる。
「ゴリラ」は50ccの排気量ながら、シフトチェンジを上手に使うとスピードがのって、小気味よく走る。エンジンの鼓動と体に受ける風も心地よい。国道をエンジン全開で走る少年は、いっぱしのライダーの気分になっていた。
10分ほど走りバイト先に近づいた時、交差点を曲がるため右折レーンに入って停止した。その時、
”とんとん”
と誰かに肩を叩かれた。
何だ!? と思ってうしろを振り返ると、そこに制服を着た男性が立っており、バイクを道の端に停めろという。状況が理解できない少年は、言われるがままにバイクを停めた。
(少年が止められた交差点)
制服を着た男性は言った。
「君、この道を50km/hくらいで走ってきたよね? 原付の最高速度が30km/hなのは知っているかな?」
しばらくたってから、少年は言葉の意味を理解した。自分はスピード違反で捕まったのだと。制服を着た男性は、警察官だった。
警察官に免許証の提示を求められたが、当然免許は持っていない。事情を説明した後、交番まで行くことになった。
少年のバイクライフは、「無免許運転」から始まった。
つづく → 其の二 JADE(ジェイド)
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