其の二 JADE（ジェイド）

（其の一　からの続き）

いきなり無免許運転で補導されるというハプニングはあったが、翌日に免許センターへ行って筆記試験に合格し、何事もなく中型二輪免許が交付された。どうやら警察側の違反処理が終わっておらず、免許交付時に行う違反記録の照会に引っかからなかったようだ。
後日、免停処分の呼び出しを受けたが、スピード違反に関しては不問となった。また、未成年ということで前科も付かず、罰金の処分もなかった。どうやら最悪の事態は逃れたようである。というか、かなりラッキーな展開になった。


免許を手に入れると、自分のバイクが欲しくていてもたってもいられない。バイク雑誌を片っ端から読み漁り、バイクショップで実物を見て購入車種の検討をした。少年はどうしても新車のバイクを買いたかったので、価格の高い400ccは諦めて250ccクラスのバイクに絞り、最終的に、ホンダの「JADE」を購入することに決めた。


ウキウキしながら近所のバイク屋へ。




書類に記入をしてさあ購入と、思ったら、

「未成年がローンを組む場合は保証人が必要です」

と書かれている。
ガ～ン！　親に相談したら、反対されるのは目に見えている。思案したあげく、愛知県に住む姉に頼み込んで、姉の名義でバイクを購入するという裏技を使うことにした。姉の名義でローンを組み、頭金の一部を姉から借りた挙句、結局踏み倒すという下劣極まりない方法でバイクを手に入れたのである（今更ながら大反省）。


わさわざ愛知まで足を運び、購入手続きをして一ヵ月後に納車の運びとなった。

そして納車当日、バイクに関する知識が全くなかった少年は、ヘルメットと自転車用の手袋を持ち、薄手のジャケットを羽織って新幹線でバイクショップへ向かった。


オートセンターヤマダ（愛知県知立市　2007年9月撮影）



ホンダ「JADE」'92　 250cc、40ps


初めて乗るバイク。どんな感じだろう。

愛知から自宅まで一気に走る無謀な計画を立てていたので、静岡方面に向かっていきなり国道一号線をひた走る。
400ccと違って250ccのエンジンは回転数の上昇が速い。パワーも必要十分で、さすがホンダの4気筒エンジンだと、一人勝手に喜んでバイクを走らせていた。


ところが、20kmほど走って岡崎市まで来た時、ミッションが入らなくなるトラブルが発生！バイクショップに電話して、引き取りに来てもらうことになった。
（少年はこれ以降も何台かのバイクを乗り継ぐことになるのだが、走行中にマシントラブルでバイクが動かなくなったのは、この時一度きりである）


岡崎城近く（2007年9月撮影）

軽トラにバイクを積んでショップへ戻り、再整備と調整。　ミッションが直った時には午後2時を過ぎていた。


どうしてもこの日のうちに関東の自宅まで帰りたかった少年は、再びバイクに乗って国道一号線をひた走る。新車は「慣らし運転」をしなければならないと刷り込まれていたので、高速は使わず、ひたすら下道を走り、エンジンの回転数を4,000回転以下に抑えてのんびりと走った。


だだっ広い静岡県を走り、箱根の入り口に付いた頃には、既に時刻は深夜0時を回っていた。


箱根街道入り口 （2007年9月撮影）

「これから箱根越えか～」

どんな道かもよく分かっていなかったが、無謀にも夜の箱根へ突っ込む。ひたすらキープレフトでゆっくり走っていると、何台ものスポーツカーが自分のバイクを追い越してドリフトしながらコーナーを駆け抜けていく！　あぶね～。

「あれがうわさに聞く "走り屋" ってヤツか！！」

よし、俺のバイクでぶち抜いてやるぜ・・・などと大それたことは全く考えず、峠を越えることに全神経を注いだ。途中、道に迷ったりしたが、明かりのついている民家を訪ねて道を聞くなどして（ほとんど不審者）、何とか箱根を越えることが出来た。

都内でも道に迷ったが、タクシーの運転手さんに道を聞いて何とか自宅まで走り、人生初のツーリングは無事終了した。時刻は午前4時近くになっていた。


この時走った距離がちょうど400km。以来、少年はバイクで400km程度走ることを「ツーリング」だと思うようになった。


つづく →　（其の三　ZEPHYR）