其の四 CBR1100XX '98 [俺とバイク]
(其の三 からの続き)
1996年の秋、ホンダの新型バイクがセンセーショナルにデビューした。
CBR1100XX スーパーブラックバード
カウルに覆われた精悍な車体は、これまでに見たどのバイクよりもカッコイイ。そして最高出力はなんと164ps!! 時速300kmで走ることが出来るようだ。
当時、最速バイクといえばカワサキのZZR1100であったが、それを上回る性能を持つバイクだ。
「こんなバイクに乗ってみたいな」
と一瞬思ったが、社会人になったばかりの青年はお金もなく、そんな凄いバイクを買うのは夢のまた夢であった。
ちょうどその頃、大型二輪免許が教習所で取得できるようになった影響で、世間では大型バイクブームが起きていた。巷のバイク乗りの多くは中型バイクから大型バイクへと乗り換えていた。
青年はゼファーをこよなく愛していたが、30,000km以上を走行し、車体にも少しガタがきていたので、大型への乗換えを考えた。
そして1999年の2月、ついに「CBR1100XX」の購入を決断!
ゼファーを泣く泣く下取りに出し、少ない貯金を頭金の足しにしてCBR1100を購入した。
CBR1100XX ’98
1999年にはインジェクションを採用した新型CBR1100がデビューしていたが、青年は型落ち在庫車の1998年型(キャブ車)を購入した。インジェクションよりキャブレターの方が燃費、フィーリングに優れていると見抜いていた・・・からではなく、単純に価格が安かったので、そちらを選んだ(^^;)。
乗ってみて感じたのは、とにかく速い! そしてエンジンとブレーキ、サスペンションから車体の剛性まで、ゼファーのようなネイキッドタイプのバイクとは段違いの性能を持ち合わせている。
車体は重いが取り扱いもそれほど苦にならず、街乗りも至って快適だ。青年は仕事が終わった後の暇な時間を見つけて、毎日のようにバイクに乗って夜の街を走った。時にはとんでもないスピードで。
そして、この手のバイクに乗ったことがある者なら、誰もが一度は試したいこと・・・
そう、最高速アタックである。一体、何キロまでスピードが出るのか。
最高速アタックをするには場所が重要だ。直線の長い平坦な道、ということで、荒川に掛かる長い橋を選んだ。
羽倉橋
交通量が少なくなる深夜0時過ぎ、青年は荒川に掛かる橋の入り口に来た。
あたりに車が走っていないのを確認して・・・スタート!!
アクセルを目一杯ひねり、ローギヤでレッドゾーンまでエンジンを回す!
シフトチェンジと共にスピードを上げて、あっという間に100km/hから200km/hへ加速!
そこからさらに加速してグングンスピードが上がり、メーターは250km/hを突破!!強烈な風圧を避けるべく、体をタンクに伏せてバイクにしがみつく。
その時、青年のビビリミッターが作動! ブレーキを掛けてスピードを落とし、橋の向こう側で止まった。
一番驚いたのは、ブレーキの性能だった。
250km/hを越えるスピードからブレーキを掛けた時の感じは、80km/hからブレーキを掛けた時の感じとほとんど変わらなかった。何事もなく減速し、車体に不快な振動やねじれも起きない。完璧と言っていいほどのブレーキ性能である。
エンジンの性能も素晴らしい。滑らからにレッドゾーンまで吹け上がり、220km/hから先の加速はまさに異次元の世界だった。そんな世界を簡単に、恐怖を感じることなく味わうことが出来る。
「世の中にはこんな凄い乗り物があるのか!」
CBR1100を開発したエンジニアを、心の底から尊敬した。
4月になって暖かくなり、さあツーリングの季節だ、どこへ行こうと考えていた矢先に、事件は起こった。
忘れもしない1999年某月、青年はいつも通り仕事を終えて自宅へ帰る途中、バイクを停めてある月極駐輪場へ立ち寄った。バイクにいたずらされていないかどうか、チェックするためである。
駐輪場へ行くと、そこにはバイクカバーと、切断されたワイヤーロックのみが落ちていた。
「!? ・・・・・・・・」
最初は何が起きたか分からなかったが、少したって状況を理解した。
バイクは、盗まれていた。
現場を見る限り、プロの手口と分かる。厳重にロックを掛けていたので、簡単なイタズラ程度では盗むことは出来ない。世間では、大型バイクの盗難が後を絶たない時代であった。
一応、警察には届けたが、おそらく出てこないだろうと考えていた。近所の捜索もしたが、見つからなかった。窃盗団に盗まれて、外国にでも運ばれてしまったのだろうか・・・。
この時、青年のバイクライフ第一幕は、事実上終了した。
つづく → 其の五 XJR1300
1996年の秋、ホンダの新型バイクがセンセーショナルにデビューした。
CBR1100XX スーパーブラックバード
カウルに覆われた精悍な車体は、これまでに見たどのバイクよりもカッコイイ。そして最高出力はなんと164ps!! 時速300kmで走ることが出来るようだ。
当時、最速バイクといえばカワサキのZZR1100であったが、それを上回る性能を持つバイクだ。
「こんなバイクに乗ってみたいな」
と一瞬思ったが、社会人になったばかりの青年はお金もなく、そんな凄いバイクを買うのは夢のまた夢であった。
ちょうどその頃、大型二輪免許が教習所で取得できるようになった影響で、世間では大型バイクブームが起きていた。巷のバイク乗りの多くは中型バイクから大型バイクへと乗り換えていた。
青年はゼファーをこよなく愛していたが、30,000km以上を走行し、車体にも少しガタがきていたので、大型への乗換えを考えた。
そして1999年の2月、ついに「CBR1100XX」の購入を決断!
ゼファーを泣く泣く下取りに出し、少ない貯金を頭金の足しにしてCBR1100を購入した。
CBR1100XX ’98
1999年にはインジェクションを採用した新型CBR1100がデビューしていたが、青年は型落ち在庫車の1998年型(キャブ車)を購入した。インジェクションよりキャブレターの方が燃費、フィーリングに優れていると見抜いていた・・・からではなく、単純に価格が安かったので、そちらを選んだ(^^;)。
乗ってみて感じたのは、とにかく速い! そしてエンジンとブレーキ、サスペンションから車体の剛性まで、ゼファーのようなネイキッドタイプのバイクとは段違いの性能を持ち合わせている。
車体は重いが取り扱いもそれほど苦にならず、街乗りも至って快適だ。青年は仕事が終わった後の暇な時間を見つけて、毎日のようにバイクに乗って夜の街を走った。時にはとんでもないスピードで。
そして、この手のバイクに乗ったことがある者なら、誰もが一度は試したいこと・・・
そう、最高速アタックである。一体、何キロまでスピードが出るのか。
最高速アタックをするには場所が重要だ。直線の長い平坦な道、ということで、荒川に掛かる長い橋を選んだ。
羽倉橋
交通量が少なくなる深夜0時過ぎ、青年は荒川に掛かる橋の入り口に来た。
あたりに車が走っていないのを確認して・・・スタート!!
アクセルを目一杯ひねり、ローギヤでレッドゾーンまでエンジンを回す!
シフトチェンジと共にスピードを上げて、あっという間に100km/hから200km/hへ加速!
そこからさらに加速してグングンスピードが上がり、メーターは250km/hを突破!!強烈な風圧を避けるべく、体をタンクに伏せてバイクにしがみつく。
その時、青年のビビリミッターが作動! ブレーキを掛けてスピードを落とし、橋の向こう側で止まった。
一番驚いたのは、ブレーキの性能だった。
250km/hを越えるスピードからブレーキを掛けた時の感じは、80km/hからブレーキを掛けた時の感じとほとんど変わらなかった。何事もなく減速し、車体に不快な振動やねじれも起きない。完璧と言っていいほどのブレーキ性能である。
エンジンの性能も素晴らしい。滑らからにレッドゾーンまで吹け上がり、220km/hから先の加速はまさに異次元の世界だった。そんな世界を簡単に、恐怖を感じることなく味わうことが出来る。
「世の中にはこんな凄い乗り物があるのか!」
CBR1100を開発したエンジニアを、心の底から尊敬した。
4月になって暖かくなり、さあツーリングの季節だ、どこへ行こうと考えていた矢先に、事件は起こった。
忘れもしない1999年某月、青年はいつも通り仕事を終えて自宅へ帰る途中、バイクを停めてある月極駐輪場へ立ち寄った。バイクにいたずらされていないかどうか、チェックするためである。
駐輪場へ行くと、そこにはバイクカバーと、切断されたワイヤーロックのみが落ちていた。
「!? ・・・・・・・・」
最初は何が起きたか分からなかったが、少したって状況を理解した。
バイクは、盗まれていた。
現場を見る限り、プロの手口と分かる。厳重にロックを掛けていたので、簡単なイタズラ程度では盗むことは出来ない。世間では、大型バイクの盗難が後を絶たない時代であった。
一応、警察には届けたが、おそらく出てこないだろうと考えていた。近所の捜索もしたが、見つからなかった。窃盗団に盗まれて、外国にでも運ばれてしまったのだろうか・・・。
この時、青年のバイクライフ第一幕は、事実上終了した。
つづく → 其の五 XJR1300
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